三秋縋『君の話』感想|ヒーローになりたかった男とヒロインになりたかった女の話

三秋縋先生の「君の話」マジで何処にも売ってないですよね。早川書房は重版したと言ってるんですけど、Amazonでは1か月待ち。楽天やヨドバシには在庫なし。

望みはほとんど行かなくなった近所の本屋さん。さいわい田舎なこともあってイオン内の未来屋書店に平積みしてありました。ちなみに、もう一つの本屋さんはそもそも入荷する予定がないとのこと。早川ァ!

あらすじ

手違いから架空の青春時代の記憶を植えつけられた孤独な青年・天谷千尋は、その夏、実在しないはずの幼馴染・夏凪灯花と出会う。戸惑う千尋に灯花は告げる、「君は、色んなことを忘れてるんだよ」。出会う前から続いていて、始まる前に終わっていた恋の物語。

感想

SFチックな世界観での恋物語とか、読む前からドキドキですよ。ぶっちゃけ恋愛ものってそこまで好きじゃないんですけど、SFが好きなこともあり世界観や設定が魅力的だとつい手を出しちゃうんですよね。たまに失敗するんですけど今回は大当たりでした。

全ては嘘

僕は基本的に単純で、伏線なんかはあまり考えない人間です。そのため、こういうあらすじを見ると単純だから千尋がなんらかの理由で灯火のことを忘れているんだろうなと思っていました。これは僕に限らず色々な人が考えることだと思います。だからこそ、B面に移動したときには驚いた驚いた。千尋が考えるように本当に幼馴染じゃなかったとは。

けれど、グリーングリーンとは非常に強力なもの。どれだけ虚構を嫌っていても、望んでいたものを手に入れるとそう簡単には手放せないわけですよ。その結果、灯火の嘘を受け入れて今度は灯火のために嘘をつく千尋は、なんというか傍から見ると悲劇なんだけどとても幸せそうで本当に羨ましいと思いました。

最後に千尋は灯火のヒーローになれて、灯火は千尋のヒロインになれた。

悲しいけど素晴らしいハッピーエンドだと思います。

9月11日 晴れ 灯火がいなくなった

すごく短い文章。けれど、ここは本当に泣きそうになりました。どれだけ長く語ってもこれほど動揺や悲しみを訴える文章はないと思います。

前日の灯火の「しあわせだった」と合わさって本当に辛かった。

おわり

本当はもっと語りたいんですけど、感想を書くためにパラパラと読み返すだけで泣きそうになるのでここで終わりにしたいと思います。君の話は千尋の物語以上に灯火の物語なんですよね。だから、前半だけを読むのと、後半を読んだうえで前半を読むのとでは全く印象が違うんですよ。

そういうわけで2度美味しいってやつなんですけど、話が話だけに2度目を読むのは本当に辛いです。というか泣きそうです。とは言え、本当に面白くて大好きな物語なので今度は電子版が出たときに読みたいと思います。そのときに改めて感想を足します。世界観的にもドラマよりアニメで見たいし、その前に漫画が読みたいです。誰かお願いします。